鳥マガHome > 鳥取グルメ > 蕎麦・うどん・ラーメン屋 > ときわすれ清水屋

その日は秋晴れと言うにふさわしく天気が良かったので、ホームページ用のネタ探しと称してドライブを楽しんでいました。10月も終わりをむかえようかと言う時期にしては汗ばむ1日だったのを覚えています。
「紅葉も見ごろかも知れない!」と思い鳥取県の郡部にターゲットを絞り車を走らせるも「紅葉にはもう少し早かったな…」

と、思っていたところにこの紅葉!本当はこの反対から見た景色が非常に良かったのですが逆光となり撮影できませんでした。
それでも、この道路に迫ってきそうな紅葉は非常に見応えがあり、思わず車を停車させて眺めていたところに「ときわすれ清水屋」を発見したのです。不勉強のため事前情報もなしだったので本当にラッキーでした。
私は蕎麦を敬遠する傾向があります。
かと言って蕎麦が嫌いなわけではなくむしろ蕎麦は好物なのです。詳しく言うと、蕎麦屋で「ざる系」のつけ麺蕎麦を食べるのが嫌いです。
これには訳があり、かつて会社の上司と蕎麦屋でざるそばを食べたときの「お前、蕎麦の食い方知らないの?」事件に起因します。連れて行ってもらった蕎麦屋で私に対して「そんなに蕎麦をつゆに浸けるんじゃない!」だの「蕎麦は2、3回噛んだら飲込むんだよ!」だの「これは更科系だから…云々かんぬん」などなど、私にとっては……「うるせなぁ!好きに食わせろよ!!」て感情とともに蕎麦屋で蕎麦を食べるのはめんどくさくて嫌いなものになってしまいました。
追記するなら、この上司は私にしてみれば「あなたが選ぶ嫌な上司」1だと言うことです。

冒頭の繰り返しになりますが、その日は10月の第4週目。米などの収穫期も終わっているので農家に迷惑を掛ける事はないとの判断で郡部の山中へとターゲットを絞り「紅葉狩り」を敢行!
しかし意外にも紅葉が始まったばかりで期待するほどの色付きではありません。「このまま帰るわけにはいかん!!」との思いで、私はパワーウィンドウ&エアコン付きの愛車を登坂へとステアリングを切ったのです!深い林の中を走ると水冷式3気筒レシプロエンジンのエキゾーストノートが心地いい。
しばらくして、何個目のコーナーを抜けた辺りか突如として迫る鮮やかな紅葉!停車させ眺めている人たちもいる。道べりには…「民家か?」と思い1度はスルーしていまいましたが、突如現れた紅葉に一瞬感じた微細なオーラが何だったのかを確認すべく引返して確認してみると、さっきは紅葉に目を奪われて気づかなかった「手打そば」のノボリが見えました。 しかし私にとっては「なんだ、蕎麦屋か…。」と言うことで再スルーが……出来ないっ!なぜか導かれるように駐車場へ車を停めてお店へと足を向けたのです。
しかし、店で蕎麦を食べる習慣のない私はここで蕎麦を食べるつもりもなく、不審者の如くコソコソと様子を伺うことに。
店舗は古民家風というより完全に古民家そのもので「田舎のおばあちゃんち」という表現がピッタリはまります。入口から中を覗いてみるとそこは広い土間になっており元々は牛飼いもしていた農家であろうことが判明。

パンフレットらしきものがあったのでそれを頂いてドロンすることに決定し土間へ踏み込むと1枚の張り紙が目にとまりました。そこには『予約』の文字が!どうやら蕎麦を食べるには少なくとも前日までの予約が必要となっているようでした。「これはむしろラッキー♪」蕎麦を食べなくて済む大義名分が与えられた私は堂々とお店を拝見することにしました。
そこへ「いらっしゃいませ〜♪」の声が!振り向くとお店の女将さんの姿がありました。私はすかさず「予約制なのですね。スミマセン」と両手でドロンの構えを作り退散することをアピールしました。 しかし女将は「知らないで来られたのですね。まだお蕎麦が残っていますのでどうぞ!」との予期せぬ返しに思わず私は「おいくらですか?」と聞き返す有様…。女将がおしながきを用意する刹那に私は1本のラインを引きます。「1,000円以上なら帰る!」と。
手渡されたおしながきに目を通す私は迷うことなく最も安価な蕎麦を探します。「あった!!ざる蕎麦\900!!」……これは幸か不幸か?力もなさげに「ざるを下さい」と注文する私。

意に反して売買契約を済ませた私には座敷に上がる権利が与えられた。営業時間は14:30まで、私が訪れたのが14:00ごろとあって店内には私以外に客は1組しかいませんでした。
全席自由とのことだったので周りが見渡せる場所を確保。黒々と煤けた天井や柱には趣があり、天気のいい日には昼寝をしてみたいような縁側の向こうには程よく手入れされた嫌味のない庭が心を静かにしてくれます。
運転で疲れた私の目は景色によって疲労から開放され、座布団に腰を下ろしたとき背中から何かがス〜ッと抜けていくのがわかりました。「気持ちいい!」このときすでに清水屋の良さを十分堪能していたのかも知れません。
お茶は本来セルフなのかも知れませんが、この時は女将さんが出してくれました。ほうじ茶かな?ポットに作り貯めされたお茶でしたが味に優しい私はこれで満足。

しばらくしてご主人と思しき方が出来上がった注文の品を運んできてくれました。銀杏入りの炊込みご飯が添えられていたのは大変嬉しかったです。
大山そばが出てくると思えば、しっかり水切された白っぽい都会系そばが出てきました。聞けば信州系のそばとのこと。そば自体の味は嫌味や雑味がなくクリアな感じで、食感は硬いと言う感じは全くなく極めてコシが強いものです。
つゆはどっしりとして深みはあるけどスッキリしている誰にでも好まれそうな濃い口です。更科系と言うのでしょうか?よくわからん。
店舗周辺の環境、古民家の店舗、ひんやりとして澄んだ空気、野鳥の鳴き声、旨い蕎麦…「五感で食すとはこのことか!」と思った瞬間でした。正真正銘の「ここでしか味わえない味」と言うのを堪能させていただきました。
嫌いではないのですが私はあまり蕎麦湯を好まないほうなのですが、問答無用で蕎麦湯が差し出されたので頂きました。
予約制を採用しており営業時間も短いせいもあってか、思いのほかさらリとした蕎麦湯でしたので飲みやすくて助かりました。老舗の人気蕎麦屋などで出される蕎麦湯の中にはドロドロで濃い目のものがあったりしますが、私は蕎麦湯の旨さが未だにわからんのです。蕎麦好きを自負する人の多くは「最後は蕎麦湯!あ〜おいしい。」などと言っておられますが、そんな人たちはラーメンを食った時でも「最後はラーメン湯が飲みたい!」とか思っているのでしょうか?
それはよしとして、その日最後の客となった私に女将さんが「同業の方ですか?」と聞いてきました。私の風貌は料理人風なのでしょうか?「いえ、全く関係ありません。」と正直に答えさせていただきました。
ここで、蕎麦についてのウンチクがあれば蕎麦談義に花咲くところなのでしょうが、あいにく私は蕎麦はド素人。しかし、それが逆に女将さんの構えを解くことになったようで「蕎麦なんて難しく考えちゃだめなのですよ。要は、その人にとって美味しいかどうかだけなのですよ。」と、蕎麦を提供する側の本音というか蕎麦を愛する人の気持ちを聞くことができ、私自身がこれまで持っていた蕎麦に対する苦手意識から開放された瞬間でした。
やがて蕎麦を食べ終えた私でしたが、「いつまでもここにいたい。」すぐに帰るのが勿体なく思えるようなとても癒された昼ごはんでした。
ここでしか味わえない蕎麦…次回は、ちゃんと予約してから伺います。
| 店名 | ときわすれ清水屋 |
| 所在 | 鳥取県日野郡日南町菅沢1019 冬季の営業は、米子市旗ヶ崎7丁目 |
| 時間 | 11:30〜14:30(予約制) |
| 定休日 | 月・火曜日 |
| TEL | 0859-87-0006、090-7892-8276 |
| 駐車場 | 道路を挟んだ向かいにあり |
| アクセス | 車で国道180号線を日南町方面に走り、県道286号線へ曲がって約1km。(酒ゴリラ(酒屋)が曲がり角の目印) 冬季は、米子市旗ヶ崎7丁目のファミレスの近く |
| 店主 | 神門(ごうど)伸次 |
| WEBサイト | - |